知っておきたい高額療養費制度

ライフプランニングと資金計画

 「高額療養費制度」をご存じですか?日本国民全員が関係することなんですけど、意外と知らない人が多いと思います。また、細かい計算などがあって取っ付きにくいかもしれません。見やすい画像なども使って、できるだけ分かりやすく解説します。

高額療養費制度とは

 同一の月内で、入院や手術などにより高額な医療費の自己負担が必要になった際に、限度額を超えた部分について払い戻しを受けられる制度です。自己負担の限度額は年齢や所得によって異なります。

 対象者は公的医療保険に加入している方ですが、日本は国民全員が公的医療保険に加入することが義務付けられていますので、日本国民全員が対象者ということになります。民間の医療保険とは関係ありません。

自己負担限度額

 毎月の自己負担限度額は、加入者が70歳以上かどうかや、加入者の所得水準によって分けられます。また、70歳以上の方には、外来だけの上限額も設けられています。

 1つの医療機関での自己負担(院外処方代を含みます)では上限額を超えないときでも、同じ月の別の医療機関等での自己負担(69歳以下の場合は2万1千円以上であることが必要です)を合算することができます。この合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。

 年収は目安です。標準報酬月額は、毎年4、5、6月に支給された報酬(基本給と住宅手当、通勤手当、残業手当などの諸手当を合算した平均額を基に決定します。健康保険の被保険者の場合、自己負担限度額は標準報酬月額で決まります。

70歳未満の方の自己負担限度額

 添付の図表を基に100万円と200万円の医療費が発生した場合の自己負担限度額を試算してみます。

 医療費の自己負担割合は3割(小学校入学後~70歳未満)で考えます。30万円を医療機関等の窓口で支払って、試算された自己負担限度額を差し引いた金額が、高額医療費として支給される形になります。

 ●年収約1,160万円~
  252,600円+(1,000,000-842,000)
  ×1%=254,180円
  252,600円+(2,000,000-842,000)
  ×1%=264,180円
 ●年収約770万~約1,160万円
  167,400円+(1,000,000-558,000)
  ×1%=171,820円
  167,400円+(2,000,000-558,000)
  ×1%=181,820円
 ●年収約370万~約770万円
  80,100円+(1,000,000-267,000)
  ×1%=87,430円
  80,100円+(2,000,000-267,000)
  ×1%=97,430円
 ●~年収約370万円
  57,600円
 ●住民税非課税者
  35,400円 

 年収約370万円~約770万円の方と比べた場合、年収約770万円~約1,160万円の方は約2倍、年収約1,160万円以上の方は約3倍の自己負担限度額になることが分かります。年収が高額療養費の適用区分の境界線近辺にある場合、どちらの適用区分になるかで、自己負担限度額が大きく異なることになります。

また、医療費が100万円から200万円に倍になっても自己負担限度額は1万円しか増えないことも分かりました。だいぶイメージできたのではないでしょうか?

70歳以上の方の自己負担限度額

 70歳以上の方は、「現役並み」「一般」「住民税非課税等」によって適用区分が分かれ、外来だけの自己負担限度額も設定されます。

多数回該当

 過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」該当となり、上限額が下がります。

その他の注意点

高額療養費の支給の対象にならない費用

  • 患者の希望による「差額ベッド代」
  • 先進医療にかかる技術料
  • 入院時の食事代の一部負担
  • 入院開始時の補償金、入院証明書発行費用、付添料
  • 交通費、入院に際しての日用品代、快気祝い など

高額療養費の計算期間と消滅時効

 高額療養費は月単位(毎月1日~月末)で計算します。年収800万円で医療費が100万円の場合、入院期間が9月1日~30日だと自己負担額は171,820円ですが、入院期間が9月15日~10月14日で各月の医療費が50万円の場合、9月も10月も限度額の範囲内の15万円ですので、合計30万円となってしまいます。

 また、高額療養費の消滅時効は診療を受けた月の翌月の初日から2年間です。

限度額適用認定証

 高額療養費は、加入している公的医療保険に「高額療養費支給申請書」を提出してから支給までに3ヶ月程かかるため、一旦、医療費の全額を立て替えて、後で払い戻しを受ける形になります。

 しかし、あらかじめ「限度額適用認定証」を加入している公的医療保険に申請して入手しておくことで、医療機関等の窓口で支払う医療費が自己負担限度額までとなり、超過分を立て替える必要がなくなります。

 認定証によって立て替えが必要なくなるのは提示した月からです。その前の月に自己負担超過分があれば、立て替えが必要です。

 必要書類は、国民健康保険の場合「健康保険証」「マイナンバーカード、またはマイナンバー通知カード[世帯主の方と限度額適用認定証をお使いになる方の個人番号(マイナンバー)がわかるもの]「本人確認書類(運転免許証、パスポート)」です。

まとめ

 制度や金額等のイメージは、付いて来ましたでしょうか?知らないでいると損をしてしまうような注意点もありましたね?是非、お友達にも教えてあげてください。

 以上、「知っておきたい高額療養費制度」のお話でした。

 

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