総務省の「国勢調査」によると2020年の70歳男性の就業率は45.7%です。70歳になっても半数近くの人が働いています。10年前の2010年は35.4%でしたので、10年で10%以上増えています。
私の両親は農家だったこともあり、80歳前後まで働いていました。最後の2~3年は耕作面積を減らしましたが、それまではバリバリの現役でした。実家の近所の農家の人たちも、みなさん高齢になっても普通に働いていたので70歳まで働くことに違和感は全くありません。
「老後2,000万円問題」は、老後30年間を夫婦2人で生活していくには年金だけでは約2,000万円不足するので、2,000万円の老後資金が必要というものでした。しかし、老後も働いて収入を得ることで資産寿命を延ばすことができます。
定年後のお金の実態
2021年に施行された高年齢者雇用安定法では、現状義務化されている65歳までの雇用確保に加えて、65歳から70歳までの就業機会を確保するための高年齢者就業確保措置が企業の努力義務とされました。
私の周りにも、この制度を利用して60歳以降も働いている方がたくさんおります。2019年のリクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」によると60~64歳の年収は中央値で280万円です。
貯蓄については、金融広報中央委員会が実施した「家計の金融行動に関する世論調査[2人以上世帯調査](令和二年)」によると、世帯主の年齢が60歳代の世帯の中央値は875万円でした。
2022年の総務省統計局の調査によると、夫婦の平均年金額は月間約22万円です。
生命保険文化センターの「2022年度生活保障に関する調査」によると「ゆとりある老後生活を送るための費用」は夫婦2人で月間38万円です。「老後の最低日常生活費」は23万円です。
資産寿命のシミュレーション
各種の調査の平均値や中央値を使って、資産寿命のシミュレーションをしてみましょう。老後の夫婦2人の生活費は最低+3万円の26万円で試算します。
65歳以降働かない場合
〈60~64歳〉
◎年収280万円−生活費26万円
×12ヶ月=▲32万円(年間不足額)
◎▲32万円×5年間=▲160万円
〈65歳~〉
◎年金(月額)22万円−生活費26万円
=▲4万円(月間)
◎貯金875万円−160万円
(60~64歳不足分)=715万円
◎715万円÷4万円(毎月の不足額)
=178.8ヶ月(≒15年)
◎65歳+20年=80歳
65~70歳で月間5万円の収入がある場合
〈60~64歳〉
◎年収280万円−生活費26万円
×12ヶ月=▲32万円(年間不足額)
◎▲32万円×5年間=▲160万円
〈65歳~〉
◎年金(月額)22万円+収入5万円
−生活費26万円=+1万円(月間)
◎+1万円(月間)×12ヶ月×5年間
=+60万円
◎貯金875万円−160万円
(60~64歳不足分)
◎+60万円(65~69歳プラス分)
=775万円
◎775万円÷4万円(毎月の不足額)
=193.8ヶ月(≒16年)
◎70歳+16年=86歳
65~70歳で月間10万円の収入がある場合
〈60~64歳〉
◎年収280万円−生活費26万円
×12ヶ月=▲32万円(年間不足額)
◎▲32万円×5年間=▲160万円
〈65歳~〉
◎年金(月額)22万円+収入10万円
−生活費26万円=+6万円(月間)
◎+6万円(月間)×12ヶ月×5年間
=+360万円
◎貯金875万円−160万円
(60~64歳不足分)+360万円
(65~69歳+分)=1,075万円
◎1,075万円÷4万円(毎月の不足額)
=268.8ヶ月(≒22年)
70歳+22年=92歳
年金の受給を70歳まで繰り下げる場合
※月間の生活費を最低の23万円で計算
〈60~64歳〉
◎年収280万円−生活費26万円
×12ヶ月=▲32万円(年間不足額)
◎▲32万円×5年間=▲160万円
〈65歳~〉
◎生活費▲23万円×12ヶ月×5年
=▲1,380万円
◎貯金875万円−1,380万円
−160万円=▲665万円
◎665万円÷60ヶ月(5年間)
≒11万円
65歳~70歳で月間約11万円の収入があって「老後の最低日常生活費」23万円で生活すれば、年金を70歳まで繰り下げて受給することで、70歳以降の年金が42%増しの約31万円になり、死ぬまで受給できます。「図解」は70歳以降の生活費を月間30万円にしています。
まとめ
老後の資産寿命のイメージはできましたでしょうか?あくまで平均値や中央値を使った試算ですので「貯金が875万円もないよ」「年金の受給額は月間22万円もないよ」という方もたくさんおられると思います。長く働くことで資産寿命を延ばすことが重要です。
私自身も社会と接点を持って、生きていく励みにするために、いつまでも働き続けたいと思っております。
以上、「働いて老後の資産寿命を延ばす」のお話でした。
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